レアメタルに対する各国の状況
レアメタル代替技術に対する国家的取り組み
レアアースやタングステン、インジウムなどのように資源の偏在性が著しく、供給制約の大きなレアメタルに関して、同様の特性をもった代替材料の開発が望まれています。こうした代替材料の研究は資源の安定供給に関わるため、早急に実用化が望まれています。代替材料の研究のためには、まず現在使用されている原料が、製品内でどういった役割を担っているのか、化学的により明らかにすることが必要です。
その上で、新物質を実際に産業で使える材料にする(マテリアライズ)、そして社会で実際に利用できるようにする(リアライズ゙)の両面が必要です。日本では各国に先駆けて政府主導の国家戦略という位置づけのもとで、レアメタルの代替材料開発を開始しています。平成19年度から開始されているインジウムやタングステン、レアアースなどのレアメタルの代替材料を研究する産学連携のプロジェクトである「希少金属代替材料開発プロジェクト」では、億単位の助成を行っています。
プロジェクトでは、社会動向や目標となる製品・サービスをまとめた「導入シナリオ」、要素技術や周辺技術の種類・性能などの目標をまとめた「研究開発ロードマップ」を策定し、それらに基づいて研究が推進されています。一方、文科省の実施する「元素戦略プロジェクト」では、亜鉛に代わる表面処理技術の開発、自動車排出ガス浄化触媒における貴金属の大幅な削減などが選ばれました。
また、経産省の「希少金属代替材料開発プロジェクト」では5年後の実用化を視野に入れつつ、インジウムとディスプロシウム、タングステンの3つのレアメタルが研究対象として選定されました。
レアメタルの代替技術
レアメタルに変わる素材の開発につながる例として鉄があります。自動車において現在国産の上級車にはハイテン材という鉄が使われています。これは鉄の構造を原子レベルで操作する、たとえば、鉄原子の一部をシリコンやマンガン原子と置き換えたり、求められる性質を実現するよう結晶の状態を制御したりすることによって軽くて強くて薄くて加工しやすい優れた鉄を作り出しています。
このような技術開発によってチタンなどのレアメタルを使用することなく鉄でそれらレアメタルを超える素材性能を引き出しています。比較的容易に入手できる物質に、このような原子レベルでの操作を行うことによってレアメタルの代替材料が生み出される可能性もあります。限られた資源であるレアメタルの代わりとなる素材や技術の研究は、国家プロジェクトとして推進されています。
しかしながら、過去の研究を考えると、新しい代替材料の発見は困難なものが多いのも事実です。特定のレアメタルでないと性能が発揮できない製品も多くあります。また、ユーザーから要求される性能にこたえるためにはレアメタル以外の材料では製造ができないものも多数あります。代替材料の開発とともに、省資源使用化技術の開発も同時に進めることが重要です。
レアメタルの安定供給確保のためには、減量戦略、代替戦略、循環戦略、規制戦略など、実際の社会での問題解決のための戦略や技術が、トータルで研究開発、そして実現していくことが必要です。
レアメタル対策とJOGMEC(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
今や世界有数の経済大国となった日本ですが、その産業と国民の豊かな生活を支えているのが石油や天然ガス、各種金属などの膨大なエネルギーや資源です。つまり、日本は世界有数のエネルギーと資源の消費国家であると言い換えることもできるのです。
しかし一方で、日本固有のエネルギー源や資源は極めて少なく、その大部分を諸外国からの輸入に頼らざるを得ない状況となっています。近年、アジアにおける著しい経済成長などから、エネルギーや資源の需要が世界全体で急増しており、日本が安定してエネルギーや資源を確保することが大きな課題となっています。
日本のレアメタル対策の中核となっているのが、JOGMEC(Japan Oil, Gas and Metals National Corporation)=独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構という組織です。JOGMECは、日本の資源とエネルギーの安定供給を確保するために2004年2月に設立されました。日本のレアメタル対策の中心となっているJOGMECは、石油、天然ガス、金属資源の探鉱や開発、備蓄、鉱害防止などの専門家組織です。
政府や諸外国、地方公共団体、あるいは民間企業などと連携を図りながら、情報や技術の提供をしたり、共同で新しい技術の研究開発を行ったり、各種資金の融資を行うといった活動を通じて、日本の資源とエネルギーの安定供給に向けた組織です。現在社会がより豊かでより便利に、そしてより高度化するのに伴って、ベースメタルやレアメタル、レアアースといった金属資源は重要度を増すばかりです。
レアメタルと日本の現状
売れている大型液晶テレビや、新機種が次々と登場する携帯電話、ガソリン価格の上昇やエコの観点から人気のハイブリッド自動車など、どれも日本が誇るハイテク製品です。しかし同時に、資源に乏しく、そのハイテク産業の原料の大部分を輸入に頼っているのです。最先端のハイテク製品の性能を高めるためにはレアメタルが必要不可欠であり、レアメタルは、そうしたハイテク産業の根幹を支えている、まさに日本にとっての「戦略物質」でもあるわけです。
国家を支える産業の維持に必要な素材を、他国からの輸入だけに依存している状態は、リスクが多いのもまた事実です。特にレアメタルのように少数国家からの輸入に頼っている場合には、その特定国家の国家戦略や状況などに左右されやすくなります。こうした現状を打破するためには、代替品の研究やリサイクルの研究の開発を推進することが望まれています。政府主導の政策、民間企業との連携、国民の意識の向上など、多面的な国全体での取り組みが必要となってきています。
日本の産業を支えるレアメタル
日本の経済は、資源を輸入し、それを製品に加工して輸出することによって成り立っており、最近注目されているレアメタルは今の日本の最先端の産業を支える必須資源です。原油の場合には「オイルショック」や、ガソリン価格の高騰など身近な問題となっていますが、同様の現象がレアメタルにも起きています。価格の高騰、安定供給の問題が生じ、「レアメタル危機」と呼ばれているのです。
政府が、石油やウランなどと同様に、資源外交の柱の一つとしてレアメタルの安定確保に乗り出すのは、日本の産業の生命線ともいえるハイテク産業がレアメタルなしには立ち行かなくなるからにほかなりません。パソコンや携帯電話に使う半導体などの電子部品、AV機器やエアコンなどの家電製品、自動車や電子基盤の加工に用いる超硬度工具に至るまで、レアメタルなしには生産ができないのです。
いかに高い技術と生産力を融資えちても、その原料がなければモノが作れない状況に陥ることになります。新しい供給ルートの確保のためにも、資源開発の面で手つかずな途上国などとの協力体制を築くことが必要と言えるでしょう。
レアメタルに対する日本政府の取組み
済産業省は、来年度から日本のEEZ(排他的経済水域)の海底に存在するレアメタルの埋蔵量調査を実施する予定となっているなど、政府によるレアメタル対策も活発化しています。平成20年度の資源エネルギー庁・鉱物資源課関連予算では、鉱物資源の安定供給、海洋開発関連合計で115億6514万5千円と前年度比で18.5%の増額となりました。そのなかで新たにレアメタルの安定確保、海底熱水鉱床の技術調査などが新たに具体策として盛り込まれています。
当面の計画では、2008年度から2012年度までの5年間で我が国の排他的経済水域(EEZ)の改定に存在する熱水鉱床に含まれるレアメタルの探査を開始します。また海外での賦存が推定される南部アフリカ諸国やベトナムなどにおいても、JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)による衛星画像探査や深海底鉱物資源探査専用船「第二白嶺丸」による鉱床の探査などを行っていく方針です。
レアメタルとバーゼル法
タイ, シンガポール, マレーシアなどのアジアの主要港からは年間2800億円もの貴金属スクラップが輸出され, その大半が中国へ, 一部が欧米に流れ込んでいます。これを日本に輸入することができれば, 国内の再資源化市場の活性化につながると考える専門家もいます。
しかし、これを阻むのが日本のバーゼル法を取り巻く環境です。日本のバーゼル法(有害廃棄物の国境を越える移動に関する規制)に基づく手続きは、他国に比べて非常に複雑で時間もかかることが、 日本ではリサイクル原料の輸入が進まない原因となっています。
ある実証研究によれば、バーゼル条約に基づく輸入手続きにほぼ6カ月を要し、その間のスクラップの保管費用(倉庫代)が輸入コスト全体の実に約7割を占めたそうです。これではコストの面で中国をはじめとする諸外国の輸入業者に比べて明らかに不利です。今後、このバーゼル法に基づく手続きをスムーズに進めるための改善が求められます。
また同時に、日本の再資源化事業者が営業拠点を設けることで、ものづくりとリサイクルの循環システムを構築することが必要でしょう。日本は、進出先のアジア企業の排出責任をもっと重要視すべきです。
日本のレアメタルへの取り組み
ちなみに銅に関して言えば、日本だけではなく西欧の優良鉱石もすでにとりつくし、今となっては北米の一部や、南米に偏在している状況です。しかも銅は使用量も多く、地球上の資源はどんどんと少なくなっていっています。ベースメタルであった銅も、今となっては「レア」な存在となりつつあるのです。
「ものづくり」の国である日本が、今後も先進工業国として世界で活躍していくためには、レアメタルの供給不安を緩和し、レアメタル資源に対する意識を今以上に高めて、方策を練ることが必要です。また、そのための新技術を開発し、問題解決をはかることも必要となってくるでしょう。
考えられる対策として、新資源の探査による資源供給の選択肢の多様化、個別の製品に対応する省資源使用技術、代替材料の開発、リサイクル技術の確立があります。また同時に、過剰な投機を抑止するために、適切な情報発信を行うことも必要となってくるでしょう。危機的状況を回避するためにも、国家的な取り組みや施策が急務となっています。
レアメタルの存在感と日本
しかしながら、産業の高度化に伴って次第にレアメタルの使用範囲は広がり、レアメタルそれ自体の特性を生かした利用も増えてきています。レアメタルがないと作ることができない製品が増え、そうした製品の製造に産業界が大きく依存するようになってきたため、その存在価値が急上昇していることで、レアメタルは「産業の生命線」となってきています。
今や、多くの製造・産業にとってレアメタルはなくてはならない存在なのです。今後もその重要性は増すばかりでしょう。日本でも、そのレアメタルの安定供給のため、備蓄制度やリサイクルに加えて、海外における自主開発比率を高めることが求められており、そのために、新たな供給先確保のための資源外交をスタートさせています。
また、各企業もJOGMECや、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)などの政府機関のサポートを受けつつ、世界での資源探査・採掘事業を進めています。
レアメタルと研究開発
また、レアメタルの探鉱開発やリサイクルの促進のためには、レアメタルの探査に必要な専門知識を有する地質技術者や、リサイクル技術に関する専門家の育成と確保が必須です。政府関係団体などが中心となった、各種研修などの実施の拡充が必要となってくるでしょう。実際、レアメタルの研究に携わっているという意識のあるなしに関わらず、現在は多くの研究員がレアメタルに関する研究開発に関与しているということもできます。
レアメタルをとりまく問題、レアメタル危機に対処していくためには、レアメタル自体に関する研究開発のみならず、こうした統計分野や、専門家の育成なども含めて、より総括的な対策をとることが求められています。
